緑内障なのに白内障手術をしましょうと言われて、どういうことだろう?と感じたことのある方もいらっしゃると思います。
緑内障と白内障は、両方とも目の病気であり、年齢を重ねるとともに発症する方が多いです。
しかし、「緑内障」「白内障」の原因や症状、治療法は異なります。
それにもかかわらず、なぜ緑内障の患者に白内障手術が推奨されるのでしょうか?
この記事では、緑内障に対して白内障手術が有効な場合とその理由について解説していきます。
当院院長の上月が動画でも解説しておりますので、よろしければ参考にしてください。
白内障手術が有効な緑内障とは -閉塞隅角緑内障-
緑内障とは、目の中にある視神経が傷ついてしまう病気のことを指します。
視神経は、私たちが見たものの情報を脳に伝える役割を持っています。この病気が進行すると、視野が狭くなってきたり、最悪の場合、失明してしまうこともあります。
原因としては、目の中の圧力(眼圧)が高くなることが挙げられます。この圧力が高まると、視神経にダメージを与えてしまいます。
眼圧が上がる原因は人によって様々です。
この中でも「②隅角(房水の通り道)が狭い。(狭隅角)」に対して、白内障手術による緑内障の進行予防・治療が非常に有効です。
狭隅角によって起こる緑内障を閉塞隅角緑内障と呼びます。
では、「狭隅角」「閉塞隅角緑内障」とはどのようなものなのでしょうか。
「狭隅角」「閉塞隅角緑内障」とは
「狭隅角」とは、目の前部、特に虹彩(アイリス)と角膜の間の角度(隅角)が狭い状態を指します。
狭隅角の状態が進行すると、虹彩の根元が角膜のトラベキュラー網に接触し、眼房水の流出が妨げられ、眼圧が上昇します。こうなることで、閉塞隅角緑内障と呼ばれる状態になります。
なお、隅角が狭く眼圧が高くなり、視野や眼底に異常が出ている状態を「閉塞隅角緑内障」といい、異常はないが隅角が狭いという状態は「狭隅角症」と言います。
ただ狭隅角なだけで、症状が出ていないので大丈夫では?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はそうではありません。
狭隅角の方は、何らかの原因で隅角が完全に塞がってしまうと「急性閉塞隅角緑内障(急性緑内障発作)」を引き起こします。
急性緑内障発作は放置すると一晩で失明に至ることもある怖い病気です。
そのため狭隅角の方は現在症状がなかったとしても、急性緑内障発作の予防として白内障手術などの治療をおすすめしています。
急性緑内障発作について
通常の緑内障では症状が徐々に進行するので、初めのうちは自分で気づかないことが多いです。
ところが急性緑内障発作では眼圧が急速に高まるため、放置すると短時間で視力を失うリスクがあります。
そのため、もし急性緑内障発作が起こった場合は早急な治療が必要になりますが、この症状は初めての診断時に脳の障害と誤解されることがあるため、治療が遅れることが懸念されます。
そのため、急性緑内障発作にならないために予防的な治療が重要になります。
急性緑内障発作の症状
突然の眼圧の上昇は通常の緑内障の症状とは異なり、以下のような色々な症状をもたらします。
発作は通常片眼にのみ生じますが、反対の目も発作を生じる可能性が高いです。
隅角が狭まると眼圧はどんどん高くなり、50mmHg以上にまで上昇することもあります(正常眼圧は10〜21mmHg)。これを放置していると失明のリスクが高まります。
急性緑内障発作を誘発する状況
隅角が狭まることで急性緑内障発作が誘発される可能性が高くなります。
具体的に言うと、「瞳孔が大きくなる(黒目が大きくなる)」と、隅角は狭まってしまいます。
そのため、以下のような状況で急性緑内障発作が誘発されやすくなります。
暗い場所
暗闇では瞳孔が拡大するため、隅角が狭まりやすくなります。
興奮
急な興奮やストレスが眼圧の上昇を引き起こすことがあります。また、興奮すると瞳孔が拡大し、隅角が狭まりやすくなります。
薬剤
抗コリン作用を持つ薬は隅角を狭める効果があり、これが急性緑内障発作の原因となることがあります。
狭隅角の診断を受けた方は、これらの薬を摂取することで緑内障発作のリスクが高まる可能性があるため、全身麻酔や内視鏡検査を受ける際には特に注意が必要です。

しかし、白内障の手術などを受けることで、急性緑内障発作のリスクを低減することができます。
手術を受けた後は、これらの薬も安心して使用することができます。
白内障手術の役割
それでは、なぜ閉塞隅角緑内障や狭隅角の患者さんに対して白内障手術が推奨されるのかをお話していきます。
白内障手術は、通常、白内障の症状を改善するために行われます。
なお、白内障とは、目の中にあるレンズ(水晶体)が加齢などの理由により曇り、見えにくくなる状態を指します。白内障は加齢と共に必ず起こります。50代で40~50%、60代で70~80%、70代で80~90%、80歳以上ではほぼ100%が白内障になるとされています。
狭隅角の患者さんにおいては、白内障手術は白内障を改善させる以外に眼圧を安定させる効果もあります。
白内障手術により自然の水晶体を取り除き、代わりに人工のレンズを挿入することで、虹彩と角膜の間の角度が広がり、房水の流出が改善されます。
これは元々の水晶体に比べて、眼内レンズは薄くボリュームが減るため、手術前よりもずっと隅角が開きやすくなるためです。
これにより、眼圧の上昇を予防することができます。
当院の白内障手術について
当院は狭隅角の方に対する白内障手術を得意としています。
手術の難易度は通常の白内障手術よりもやや上がりますが、当院の術者の技量と手術器械(センチュリオンアクティブセントリー)でほとんどの場合、短時間で全く問題なく終わります。
詳しくは「当院の白内障手術について」のページをご覧ください。
白内障手術以外の治療
レーザーを用いて、虹彩の辺りに小さな穴を作成し、房水の流れるルートを確保する治療法もあります。
治療前には点眼麻酔を施し、虹彩切開用の特別なコンタクトレンズを装着します。通常、まぶたに隠れている上部や、鼻寄りの虹彩の周囲にレーザーを当てます。
レーザーを当てる場所によって、術式が少し異なります。
眼球内部がはっきりと見える場合、レーザー虹彩切開術(LI)を選択します。
しかし、角膜が曇っている場合や、白内障手術のリスクが高まる状況では、周辺虹彩切開術(PI)を採用します。
当院でも治療を行っており、5分程度で終了する治療です。
ただ、この治療のみでは急性緑内障発作を完全に予防できるわけではありません。
そのため、結果的に狭隅角の方に対しては白内障手術による治療が必要となる場合があります。
当院院長の上月が動画でも解説しておりますので、よろしければ参考にしてください。
まとめ
緑内障と白内障は異なる目の病気であり、それぞれの原因や症状、治療法も異なります。
しかし、緑内障の一種である閉塞隅角緑内障や狭隅角の方には、白内障手術が眼圧を安定させる効果があります。
手術によって、虹彩と角膜の間の角度が広がり、眼圧の上昇を予防することができるのです。
当院では、このような狭隅角の方に対する白内障手術を得意としており、安全かつ効果的な治療を提供しています。
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